池下助教,津野教授らの論文が国際学術誌 Inorganic Chemistry Frontiers誌のFront cover ならびにHOT articlesに選出されました
2025-08-08ホットニュース
本学科 池下助教、津野教授、今井喜胤教授(近畿大学)らの共同研究成果が英国王立化学会の発刊するInorganic Chemistry Frontiers誌に掲載され、掲載誌のFront coverならびに今年の注目すべき論文“2025 Inorganic Chemistry Frontiers HOT articles”に選出されました。本研究成果は、津野研究室所属の佐竹未有さん(M2)が精力的に取り組んだ結果となります。
研究概要
円偏光発光(CPL: Circularly Polarized Luminescence)とは、キラリティーを有する発光材料が右回りまたは左回りの円偏光を過剰に発する現象であり、3次元ディスプレイや光暗号通信などへの応用が期待されています。特に近年では、分子構造を外部刺激によって可逆的に変化させ、CPLの発光色、強度、さらには回転方向までも制御可能とする技術の開発に注目が集まっています。
本論文では、多環式芳香族化合物の一種であるピレン環を導入した新規キラル亜鉛錯体を設計・合成し、そのCPL特性を詳細に検討しました。その結果、希薄溶液中室温条件下ではCPLシグナルは非常に弱かったものの、温度を–20℃まで低下させることで顕著なCPLが観測されました。さらに、分子が凝集した固体状態では、溶液状態とはCPLの回転方向が反転したシグナルが確認され、単一分子プラットフォームにおいて複数の外部環境応答性が実現されました。本研究は、刺激応答性CPL材料の設計に関する重要な知見を提供するものであり、将来的にはセンサー材料やセキュリティ機能を備えた材料の開発への応用が期待されます。